吸血鬼 wikipedia|無料辞書
吸血鬼(きゅうけつき)は、
民話や
伝説に登場する架空の存在で、
ヒトや動物の
血を吸う
怪物。
多くのフィクションにおいて題材として取り上げられてきた。バンパイヤ、ヴァンパイヤ、ヴァンピルなどとも書かれる。一般に吸血鬼は、一度死んだ人がなんらかの理由により不死者としてよみがえったものと考えられている。現代の吸血鬼・
ヴァンパイアのイメージは東ヨーロッパの伝承に起源をもつものが強い。吸血鬼の伝承は世界各地で見られ、
ヨーロッパのヴァンパイアに加え、
アラビアの
グール、
中国の
キョンシー等がある。この場合、吸血鬼という名称が用いられているが、人間の血を吸う行為は全ての吸血鬼伝承に共通するものではない。吸血鬼の個体としては
ドラキュラ、
カーミラが有名。
◆ 民間伝承の中の吸血鬼
古くから血液は生命の根源であると考えられており、死者が血を渇望するという考えも古い。例えば
古代ギリシャに書かれた
オデュッセイアでは、オデュッセウスが降霊の儀式を行う際に生け贄の子羊の新鮮な血を用いるくだりがある。このようなイメージが吸血鬼を生み出したと考えられる。
吸血鬼伝承の形態は、全ての民間伝承がそうであるように地域や時代によって一定しないが、一度は葬られた死者が、ある程度の肉体性を持って夜間活動し、人間・家畜・家屋などに害悪を与えるという点では、おおむね一致している。
吸血鬼の姿は生前のままであるか、もしくはぶよぶよした血の塊のようなものであるとされることが多い。両者とも、一定の期間を経れば完全な人間になるとされることもある。また、様々な姿に変身することが出来るとされるのが一般的である。吸血鬼は、小さな虫に変身する、
ねずみに変身する、
霧に変身するなどの手段を用いて
棺の隙間や小さな穴から抜け出し、真夜中から夜明けまでの間に活動するものとされた。棺の蓋を開けて抜け出すものとは考えられていない。また、地域によって異なるが、特定の
月齢や
曜日、キリスト教の祭日などの日には活動できないとされる場合が多い。
死者が吸血鬼となる理由には、生前犯罪を犯した、信仰に反する行為をした、惨殺された、事故死した、
自殺した、魔女であった、人狼であった、葬儀に不備があった、何らかの悔いを現世に残している、死者の上を猫やその他の動物が横切った、などの例が挙げられる。また、これらの理由以外にも、まったく不可解な理由によって吸血鬼になることもあるとされた。そのため吸血鬼の存在が強く信じられた地方では、墓に大量の黍を捲く、にんにくを置く、茨を置く、一定期間墓の周りで火を焚き続ける、などの予防措置がほぼ全ての死者に対して行なわれた。
吸血鬼がその活動によって与える害悪としては、眼を見る・名前を呼ぶ・何らかの方法により血や生気を吸うなどの手段により人を殺す、家畜を殺したり病気にする、家屋を揺さぶる、生前の妻と
同衾し子供を産ませるなどの例が一般的である。また、吸血鬼と人間との間に生まれた子供は、
ジプシーの伝承では「
ダンピール」、スラブ人の伝説では「
クルースニク」「
ヴェドゴニャ」と呼ばれ、生まれながらに吸血鬼を発見・退治する特別な能力を持つと信じられる場合が多い。
◇ ヨーロッパの吸血鬼伝承
スラブの人々は4世紀ごろには既に吸血鬼の存在を信じていた。スラヴの民話によると、吸血鬼は血を飲み、銀を恐れる(ただし銀によって殺すことはできない)とされた。また首を切断して死体の足の間に置いたり、心臓に木の杭を打ち付けることで吸血鬼を殺すことができると考えていた。
現在の吸血鬼に対する考え方は古代ルーマニアから続いているものである。古代ルーマニアは古来からの宗教や文化が、キリスト教やスラヴ民族と混ざりあう過程を経験した。異なる宗教と文化における矛盾、外からの人々の流入により新たな疫病が持ち込まれ不可思議な死が増加したことに対する答えとして吸血鬼伝承が生まれたと考えられている。この民話では吸血鬼によって殺された者は吸血鬼として復活することになっており、何らかの手段で殺されるまで新たな吸血鬼を増殖させることになる。この段階では吸血鬼は知性のない動物のような悪魔として扱われている。
カトリック教会地域における吸血鬼伝承は12世紀ごろから急激に消滅し、それ以降「夜間活動する死者」の伝承は、肉体性をまったく持たないもの、すなわち日本語で言う幽霊のようなものへと変化している。キリストの復活を重視するローマ教会としては、それ以外の死者の復活を許容できなかった。また、
東欧やバルカン半島においては、
ヴルコラク[平賀英一郎、『吸血鬼伝承 - 「生ける死体」の民俗学』、中央公論新社<中公新書>、2000年、p63、65。]、
ストリゴイ、
ヴコドラク、
クドラクなど様々な吸血鬼伝承が存在しているが、それらは
人狼・
魔女・
夢魔・
怪鳥などの伝承と融合し区別が難しい場合がある。
永遠の若さや他の力をもつとされるのは
ヴィクトリア朝時代に入ってからである。現在の吸血鬼の多くは、不老不死で知性的な、多くの不思議な力を持つ者として描かれる。吸血鬼は霧、オオカミあるいはコウモリに変身することができるとされる。また、古来から鏡には人間の魂を映し出す力があると信じられていた為、肉体と魂の結びつきが弱いとされる吸血鬼は、鏡にその実像が映らないとされる。
◇ 吸血鬼退治
吸血鬼の存在を信じていた人々にとっては現実に差し迫った脅威であり、とくに農村部などにおいては、不可解な事件が発生した際に、多くの吸血鬼退治が現実に行なわれた。この吸血鬼退治は、ごくわずかではあるが20世紀になってからも行なわれたことが資料によって確認されている。
具体的な退治方法としては、首を切り落とす、心臓に杭を打つ、死体を燃やし灰を川へ捨てる、銀の銃弾もしくは呪文を刻んだ銃弾で撃つ、などの方法が挙げられる。また、葬儀をやり直す、死体を聖水やワインで洗う、呪文などを用いて壜や水差しに封じ込める、などの死体を損壊しない方法がとられることもあった。生きている人間が吸血鬼として処刑された例がまったく無いわけではないが、これらはきわめてごく稀な例外である。
また、吸血鬼を発見し退治する特殊能力を持った人間の存在が広く信じられており、実際に吸血鬼退治を職業もしくは副業としていたものも存在した。
吸血鬼退治は、聖俗の両権力から不当に死体を損壊する不道徳な行為であると考えられていたらしく、吸血鬼退治に関する禁令が出ることもしばしばであり、少なくとも近世以降は、吸血鬼という概念は知識階層にはあまり真に受けられるものではなくなっていたことが窺える。また、西欧における聖俗両権力による大規模な
魔女狩りのような、大規模な吸血鬼退治は発生していない。ただし農村部などでは、農民の反発を恐れた地方領主や役人が吸血鬼退治を看過することはとくに珍しいことではなく、禁令はたいていの場合無視されている。
◇ 現代の吸血鬼伝説
21世紀になった現代でも、一部の地域では吸血鬼伝説が色濃く残っている。
・吸血鬼 page1
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