郁達夫――彼は苦悶の詩人であった。彼は自己の苦悶を真摯なる態度を以て追求し、大胆な表現の中に曝露することによって中国文壇に異常なる影響を齎した。何故ならば彼の苦悶は同時代の青年の苦悶の集約であったからである『竹内好全集』17巻160頁。「外部の権威である『政治』に迎合することで他者に君臨するのではなく、自己の内部にある苦悩を掘りさげる『文学』で他者の苦悩とつながること。竹内はこうした郁達夫の作風を、『弱さに徹した強さの芸術』と形容している」小熊英二 『<民主>と<愛国>――戦後日本のナショナリズムと公共性』 新曜社、2002年。